
basketballking
2026年05月14日(木)03:00

勝利のチャンスはあった。だが、“4度目の正直”はならなかった。
「(オクラホマシティ・)サンダーがチャンピオンであるのには理由がある。彼らは常に答えを見つけ出し、アジャストし返してきた。僕らがどんな手を打とうとも、彼らは対抗策を持っていた。僕らはいろいろなことを試した。だが、結局うまくいかなかった」と八村塁は静かに語った。
110-115。
レギュラーシーズンも含めて今シーズン8度目の対戦で、初めて接戦で負けた。レギュラーシーズン中、1度9点差で敗れているが、この試合では残り1分3秒に八村が決めたレイアップで3点差になって以降得点できず、サンダーに6点を追加されて敗れた。あとの6度はいずれも2ケタ得点差での敗戦だ。
◆■最後の勝負どころでベンチへ…それでも八村の心は乱れず
熱戦の中、最後まで八村のシュート確率は下がらなかった [写真]=Getty Images
ウェスタン・カンファレンス・セミファイナルで最初の3戦を全敗し、崖っぷちに立たされたロサンゼルス・レイカーズは、決死の覚悟で第4戦に挑んだ。
第1クォーターを5点リードして終えたものの、第2クォーターは残り5分38秒にレブロン・ジェームズがフリースローを決めるまで加点できず、4点差をつけられてハーフタイムを迎えた。
だが第3クォーターになると、前半に3本の3ポイントシュートをすべて外し、4得点だった八村がギアを上げ、開始2分で7得点。残り1分22秒にはリードを奪うフリースローを2本決めるなど、同クォーターだけで2本の3ポイントシュートを含め12得点とした。チームは78-79とされた残り1分以降6得点。その間サンダーを1点に抑えて、84-80で第4クォーターに突入。このシリーズで初めて第3クォーターを終えた時点でリードを奪った。過去3試合はいずれも同時点で2ケタ点差をつけられていただけに大きな進歩だった。
勝負の第4クォーター中盤、八村は3点差を追う中でリバウンドをもぎ取って自ら得点につなげ、1点差にした。残り3分10秒には3ポイントシュートを成功させ、残り1分41秒にはレブロンがミスしたシュートのリバウンドを奪うと、チェト・ホルムグレンを相手にドリブル突破と見せかけて、ステップバックで3ポイントラインの外へ出て3ポイントシュートを成功させた。ホルムグレンからファウルも奪い、一挙4点を追加。103-109と6点差だった試合を107-109と2点差に縮めた。残り40.9秒にはマーカス・スマートのアンドワンで110-109とリードを奪った。
八村は3点を追う残り12.2秒からのレイカーズの攻撃で、いったんベンチに下がった。試合後は質問時間、質問者が限られた上、シーズンを振り返る質問が相次いだため、JJ・レディックヘッドコーチにレブロン、オースティン・リーブス、ルーク・ケナード、スマートに加え、それまで出場機会のなかったマックス・クリーバーを起用したことについて質問が出ることはなかったが、インサイダー情報に詳しいESPNのラモナ・シェルバーン記者のSNS投稿によると、「クリーバーはスクリーナーとして出場。ケナードはおとり(第3オプション)として同じ時間にコートに入った。リーブスかレブロンがショットを打つ予定で、スマートはパスを出す役割だった。クリーバーはスクリーナーとして、また実行力のある選手として優れているため、あの場面で八村よりも優先された。ケナードは、彼がもたらす影響力により起用されたと聞いた」としている。
同プレーが始まる前、八村に声をかけていたディアンドレ・エイトンは、「(八村がベンチに座っていたため)少し混乱した。彼はコートに戻ると思っていたからね。だから大きな声で『コートに入らないのか?』と聞いたんだ。そしたら塁は『出ないんだ』と言った。ケナードが入ったことを知らなかった。塁が入るものだと思っていた。僕の誤解だった」と説明した。エイトン自身、時にベンチに下げられることの悔しさをむき出しにしていた。そういった気持ちがわかるからなのか、今シーズン最後の試合が終わり、ロッカールームから引き上げる前には、八村のところに行き、椅子に座っていた八村を後ろからハグするように何かを話して出て行った。
八村は同起用について、「コーチが決めたこと。(理由などは言われて)ない。コーチが決めたことなので、(納得とか)そういうことも別に何も(ない)」とあっさりと答えた。
結局、このプレーでリーブスが残り8.3秒に放った3ポイントシュートは外れ、残り6.4秒にサンダーのエイジェイ・ミッチェルがフリースローを2本決めて決着がついた。
◆■「僕はこのチームを誇りに思っている」
敗戦後の会見も、充実のシーズンに笑顔を見せる [写真]=Getty Images
八村はチーム最長の43分11秒プレーし、今シーズンのプレーオフ自己最多の25得点、5リバウンド2アシスト1ブロック。すべて出場したプレーオフ10試合の1試合平均はチーム最長となる38.6分の出場で、3番目の17.5得点4リバウンド。すべての試合で3ポイントシュート成功率50パーセント以上を記録し、その平均は56.9パーセント(33/58)。プレーオフ自己通算3ポイントシュート成功率は51.6パーセント(81/157)とNBAプレーオフ史上最高を維持している。
「今年のシーズンは、大事なところでどれだけチームにインパクトを与えられるかということを意識してきた。エフィシエンシー(選手の貢献度を数字で表したもの)であったり、いろんなプレーを決めることとか、そういうところを意識してやってきたので、(その成果が)今回のプレーオフに全部出たと思う」と八村。「僕としてもやりがいがあったし、これからのNBA人生というか、NBAのキャリアがどうなるかというのは楽しみ」と、大きな自信を得たプレーオフだったことを感じさせた。
「昨シーズン優勝したチームと戦い、とてもタフなシリーズだった。このシリーズに入る前、サンダーは10日間ぐらいの休みがあり、僕らはNBAで最もフィジカルなチームの一つであるヒューストン・ロケッツと第6戦まで戦って勝ち抜き、このシリーズまで休む間はほとんどなかった」と話し、フィジカル的にもいかに大変なことであったかを思わせた。
だが、ウィザーズ時代も含め、自己5度目のプレーオフで最高の結果を出した八村には、敗戦の中にも充実感が漂っていた。
スイープ(1勝もできずに敗退)で、あまりにもあっさりと終わってしまった最後ではあったが、レディックHCが、チームで一丸となって戦ったこのシリーズを通して、「最終的には、本当に激しく戦い、結束が固く、そして何よりも情熱にあふれたチームになった」と言うように、チームとしても大きな意味があったシリーズだった。
だからこそ、八村も胸を張る。
「僕はこのチームを誇りに思っている。このチームを愛している」と。
文=山脇明子