
basketballking
2026年05月30日(土)23:55

コート上ではいかなる状況でも冷静沈着なシェイ・ギルジャス・アレクサンダー(SGA)がご立腹だ。史上14人目のとなる2シーズン連続MVPを獲得し、オクラホマシティ・サンダーをけん引する男は、自身の代理人を務める法律事務所「ArentFox Schiff LLP」のエリック・フィッシュマンを通じて、スポーツゲーム企業「Underdog」に対し、停止通告書を送った。
停止通告書が送られるまでに至った理由は、『Underdog』がプレーオフ期間中に展開したボードゲーム風のプロモーション「Unethical Hoops(=倫理に反するバスケットボール)」にある。
元ネタとなったのは、1965年に発売された電動ボードゲーム『Operation』だ。ピンセットで患部パーツを取り出す際、縁に触れるとブザーが鳴る仕組みで知られる往年の玩具である。『Underdog』は、その“触れたらアウト”というゲーム性を、シェイのプレースタイルを揶揄するために転用。ボードに埋め込まれたボールをつまみ出す際に、シェイを模したキャラクターへ触れるとブザーが鳴り、シェイの“フロッピング(意図的にファウルをもらう動き)”を皮肉ったのだ。
『Underdog』は、アメリカで急成長してきたスポーツゲーム企業でもある。選手やチームを対象にしたPick’emや、ファンタジー型のプロダクトを前面に押し出し、2025年の資金調達では企業価値が約12億ドル(約1910億円)超に達したと報じられた。近年は、ミーム的なユーモアを含んだデジタル施策でも存在感を強めており、今回のシェイ案件も、その延長線上にあるPRの一つと受け取られている。
もっとも、単なるSNS上の悪ふざけであれば、ここまで大きな話には発展しなかったかもしれない。シェイ側が問題視したのは、この企画がジョークの範囲にとどまらず、100個限定の配布キャンペーンを伴う商業プロモーションとして展開されていた点にある。さらに広告には、カナダ代表のチームメートであるディロン・ブルックスも起用され、話題は一気に拡散した。
『The Athletic』が入手したとされる書簡では、フィッシュマン弁護士が『Underdog』に対し、シェイの氏名・画像・肖像(NIL)の無断使用を問題視し、関連するウェブサイト、アプリ、SNS、広告、現物商品の恒久的な使用停止に加え、制作済みゲームの破棄まで要求している。
それでも、『Underdog』側は要求に応じる姿勢を見せていない。『Front Office Sports』によれば、広報担当者は「我々は、スポーツファンの時代感覚にあるものなら何でも楽しんで取り入れたいと考えている」といった趣旨のコメントを出しており、プロモーション自体を引っ込める様子は見られていない。
シェイのフロッピング問題は、今シーズンのプレーオフでも大きな議論の的となっている。『The Athletic』によれば、シェイは過去4シーズンでプレーオフを含めると、次に多い選手よりも391本多くフリースローを試投している。また、今年のプレーオフではフィールドゴール成功数114本に対し、フリースロー成功数が120本を記録。サンアントニオ・スパーズとのカンファレンスファイナル第3戦でも、ペリメーターでシェイとマッチアップしたディアロン・フォックスが接触をかわしながらもファウルコールされたシーンが取り上げられ、ファンからは「フォックスに息を吹きかけられたから倒れたんだろう」、「杖が必要な87歳の祖母の方が、崩れ落ちるシェイより膝が強いな」など、辛辣なコメントが後を絶たない。
ただし、コート上での雑音についてシェイ本人は冷静で、記者からの問いに対して「何の影響もない。自分を奮い立たせることもないし、落ち込ませることもない。長い間、それに対処してきた」とコメント。だが、企業のプロモーションに発展した以上、静観するつもりはなかったのだろう。
ウェスタン・カンファレンスの決勝戦がゲーム7にもつれ込む中、シェイ対『Underdog』の争いもどのような形で決着するのか、注目が集まっている。
文=Meiji