
basketballking
2026年07月27日(月)10:00

自分ではコントロールできないこと——。次シーズン、自己8年目を迎える八村塁(ロサンゼルス・クリッパーズ)もよく口にする言葉だ。ドラフト上位指名を受け、期待されてNBA入りした八村であってもそう感じることは多く、そのたびに自らの心を整理し、前進してきた。
そして、NBA3年目の挑戦となる河村勇輝にとっても、「自らにはコントロールできないこと」にどう対応するのかを改めて学んだ夏となった。
◆■ドラフト後の状況変化と河村の覚悟
インディアナ・ペイサーズからサマーリーグ参加の誘いがあったのは、ドラフトよりもずっと前のことだった。「(ほかのチームよりも)一番最初にオファーが来ました。熱意もありましたし、ドラフトのもっと前にサインしていました。ガードのところだったりとか、自分にとってシチュエーションがいいなと思っていたんですけど」と河村は振り返る。
「まあ、ドラフトがあったりとか、そういうのもあっていろいろ事情が変わってしまいましたけど、やっぱり(速いペースでプレーする)バスケットボールのスタイルが僕に合うなと思っていたので、それで選びました」とペイサーズでプレーすることになったいきさつについて説明した。
「ドラフトがあったりとか」というのは、6月に行われたドラフトでペイサーズがシカゴ・ブルズから2巡目全体38位で指名を受けたパデュー大学のブレイデン・スミスをトレードで獲得したことだ。
身長183センチとNBA選手としては小柄なポイントガードであるスミスは、幼少期からインディアナポリス郊外で育っており、高校時代は“Indiana’s Mr. Basketball” に選ばれている。転校が盛んな現NCAA(全米大学体育協会)1部(以下DI)において、地元インディアナのパデュー大で4年間プレーし、自己通算アシスト数1103はDI史上最多。大学通算1500得点以上、1000アシスト以上、500リバウンド以上を記録したのは、DIの歴史でスミスのみだ。つまり、スミスはインディアナポリスが生んだ “期待のホープ”。ペイサーズにとっては、どのチームよりも間近で見てきた有望選手であり、自チームで育成していこうとするのも当然のことなのだ。
ペイサーズ入りが決まった後、地元のヒーロー、スミスがトレードでやってきた [写真]=Getty Images
ペイサーズでサマーリーグに挑むことを決めていた河村にとって、当初の予定とは異なる展開となった。
「特にサマーリーグでは、ドラフトされた選手がミニッツをもらうというのは周知のこと。ドラフト後、彼のプレースタイルなどをチェックすると、かなりピュアなポイントガードで、すごく僕に近いスタイルだった」と河村は明かし、「ただ(自分には)コントロールはできないので。なかなか難しいサマーリーグになるのかなと思いました」と振り返った。
ただ、ペイサーズ側とも「しっかり話はしていた」そうで、「そこでチームを変えるという選択肢はなく、僕がもらえるミニッツのなかで最大限貢献しようと、気持ちを切り替えました」とドラフト後の心境を語った。
◆■初戦で見せた持ち前の勝負強さ
そのようにして臨んだサマーリーグ。初戦のクリーブランド・キャバリアーズ戦で河村は、第3クォーターにドリブルするなか、相手から押されてもバランスを崩すことなく前進し、ターンアラウンドジャンパーでディフェンダーをかわしてフィニッシュする好プレーを見せた。同クォーター、河村が出場していた間にペイサーズは6点差からこの試合最大の21点差にリードを広げた。
河村は、同クォーターを終えていったんベンチに下がったが、11点差に追い上げられた第4クォーター中盤から再び出場。一時は1点差になりながらもリードを守り切り、スターター4人と河村のローテーションで、再びリードを広げて勝った。後半3ポイントは打たなかったが、フィールドゴール3分の3、フリースロー1/1(ルール上2ポイント)とミスなしの8得点3アシスト。「前半シュートを決められなかったところもありますし、フリースローも良くなかった(1/2)」としながらも「後半立て直してクラッチタイムでプレーできたことが一つ、自分としてはうれしかったし、まずは勝てたことが何よりもうれしい」と安堵の表情を浮かべた。過去ツーウェー契約選手としてGリーグとNBAでプレーし、自らの長所をしっかり見せたなか、「やはりクラッチタイムが一番、特にクロスゲームだと(自分は)存在感をすごく発揮できると思っている。クラッチタイムでの存在感というのは必ず自分の強みにしたいところ」と気を引き締めた。
ベンチから戦況を見つめる河村 [写真]=Getty Images
今回のサマーリーグでもう一つ、自らではコントロールできないことが起こった。それはサマーリーグが、チームが選手の能力や特徴を見定める場であり、出場状況もそれに左右される傾向があるということだ。もちろん真剣に勝ちにいくチームもあるが、ペイサーズの場合、それよりもトレーニングキャンプに向けて、どの選手とどういった契約をしていくかということを重んじているようだった。
文=山脇明子