
basketballking
2026年09月11日(金)09:31

NBAのオフシーズンの評価は、獲得した選手の名前だけでは決まるものではない。優勝を狙うチームなら現在の戦力を最大化できたのか。再建中なら未来へつながる資産を増やできたのか。そして、そのために支払った代償は適切だったのかも判断基準となる。
『Bleacher Report』のダン・ファバーレ記者は、今夏のオフの動向を踏まえて、“しくじった球団”を選出。また、『CBS Sports』や『The Ringer』でも球団の動きをグレーディングしている。
以下では、現在地との整合性、失った資産や戦力、取り返しのつかなさ、今後数年への影響などを物差しに、決断に疑問の残る5球団の夏を振り返る。
◆■ボストン・セルティックス「柔軟性優先の決断も全盛期ブラウン放出で短期的な戦力低下は否めず」
東地区のライバルチーム同士、ブラウン(右)とジョージ(左)がトレードされた [写真]=Getty Images
ジェイレン・ブラウンの放出は、この夏で最も大胆なトレードだろう。2024年ファイナルMVP、昨シーズンは自己最高の平均28.7得点。その見返りはポール・ジョージ、1巡目指名権2本、2巡目指名権2本だった。球団はこの決定について、ブラウンとジェイソン・テイタムの大型契約を抱え続けるより、将来的な柔軟性を確保する必要があったと説明している。
だが、『Bleacher Report』も指摘するように、リーグトップの万能ウィングには3年の保証契約が残っていた。また、ジョージとの年俸差も大きくなく、同選手には健康面での不安がついてまわる。30歳を迎える全盛期のブラウンから、6歳以上年上のケガがちなベテランに入れ替えたことで、短期的な戦力は低下。ブラウンが残留していれば、依然として優勝候補だったことは否めない。また、3年4740万ドル(約73億9200万円)で契約したミッチェル・ロビンソンも、ロードマネジメントによる出場時間の不安が残っている。
しかし、この背景にはリーグでも指折りの敏腕GM、ブラッド・スティーブンスの存在がある。その点、結果で周囲を黙らせることになっても驚きはない。
◆■デンバー・ナゲッツ「ヨキッチ全盛期に“経費削減”を優先…ワトソン放出に疑問の声」
現役最高峰の選手が所属しているだけにチームが積極的に動けず [写真]=Getty Images
ナゲッツへの批判は、ニコラ・ヨキッチの全盛期に再び“経費削減”を優先したことに集約されている。特に、昨季平均14.6得点まで急成長したペイトン・ワトソンを放出し、ナゲッツが獲得した主な対価は2031年1巡目と2032年2巡目指名権だった。
ワトソンはクリーブランド・キャバリアーズと4年8800万ドル(約135億1900万円)で契約。この金額なら一度は残留させ、その後にサラリー整理を考えるほうが合理的だった。デマー・デローザンのミニマム契約は心強い一方で、ワトソンが担った若さ、運動能力、守備力、将来性は補えない。
ヨキッチは残留を強調しているものの、今夏も契約延長を見送っており、これらの動向はファンの不安を煽っている。世界最高峰の選手の全盛期をどう使うのか、ラグジュアリータックスを支払ってでもタイトルを目指すべきだとの声もある。
◆■ロサンゼルス・レイカーズ「ケスラー獲得に巨額の代償…1人のビッグマンに賭けすぎか」
レブロン、八村がチームを離れドンチッチ(右)とリーブス(左)が残った [写真]=Getty Images
レイカーズは、最も興味深い球団である。八村塁を筆頭に、昨シーズンまでの主役はほぼ全員去った。チームはルカ・ドンチッチとオースティン・リーブスを残し、クエンティン・グライムズ、サンドロ・マムケラシュビリ、コリン・セクストンらを補強。「層が厚くなった」との声もあれば「理解できない」との声もあり、まさに蓋を開けてみないとわからない状態となっている。
最大の補強は、待望のビッグマンであるウォーカー・ケスラーだが、そのために支払った対価は疑問だ。たとえドンチッチからの強い要望とはいえ、4年約1億3000万ドル(約199億7200万円)はセンターとしてリーグの準トップクラスの給与。昨シーズンはケガの影響で5試合の出場にとどまり、プレーオフも未経験と実績不足は否定できない。
さらに、ユタ・ジャズには2031年と2033年の無保護1巡目、2028年と2030年の1巡目スワップ権を譲渡。実質4本分の1巡目資産をコントロールされる代償は巨大であり、ドンチッチを中心に今後10年近く使える資産を、この夏と1人の不確定なビッグマンに費やしすぎているのは、賭けに出過ぎていると言える。
◆■ニューオーリンズ・ペリカンズ「勝利か再建か…方向性が見えない動きのなさを問題視」
ペリカンズはウィリアムソン(左)やマーフィー3世(右)など市場価値のある選手を抱えながら、大規模な再建には踏み切らず [写真]=Getty Images
レイカーズと対照的に、ニューオーリンズ・ペリカンズは現状に対して、動きがなさすぎた。昨シーズンは、26勝56敗。ザイオン・ウィリアムソン、トレイ・マーフィー三世、ハーバート・ジョーンズなど市場価値のある選手を抱えながら、大規模な再建には踏み切らなかった。
一方で、37歳のデアンドレ・ジョーダンと再契約し、ベネディクト・マサリンを2年1600万ドル(約24億5800万円)で獲得。後者はよい補強だが、このロスターがどの時間軸で、何に向かっているのかは依然として見えてこない。勝ちに行くなら戦力が足りず、再建するならベテランや主力の資産化が必要なはず。『Bleacher Report』はこの曖昧さを問題視している。
◆■ポートランド・トレイルブレイザーズ「モラント獲得もフィットに課題…既存若手との相性に不安」
モラント獲得が吉と出るか凶と出るか [写真]=Getty Images
ジェレミ・グラントとクリス・マレーを放出し、2度のオールスター選出を誇るジャ・モラントを獲得した。スター獲得のカードとしては決して高くなく、ブレイザーズは最も派手な補強を行った。
問題はフィットにある。昨季42勝でプレーオフへ復帰したブレイザーズには、スクート・ヘンダーソン、デニ・アブディヤ、さらに復帰予定のデイミアン・リラードがおり、必要だったのは彼らの周囲で機能するシュート力だ。新ヘッドコーチ(HC)のミカ・ノリ自身も3ポイントシュート成功率を改善点に挙げているものの、そこへ加入したのがボールを長く保持してこそ最大の価値を発揮するモラントだったと言うわけだ。
才能は増えた。しかし、その反動でアブディヤやヘンダーソンからボールと成長機会を奪い、リラードとの同時起用では守備にも不安が残る。
文=Meiji