
basketballking
2026年09月30日(水)06:28

ネイビーブルーを基調としたロサンゼルス・クリッパーズのユニフォームを身に着け、初めてメディアの前に現れた八村塁は、「本当に新鮮な気持ちです」と微笑んだ。
「チームの方針だったり、コーチ陣、トレーナー、チームメートもみんな、とてもフレッシュな感じで入れています。ユニフォームのデザインもすごくかっこよくて、本当に気に入っているので、このシーズンが楽しみです」
2026-27シーズンのトレーニングキャンプを始動したクリッパーズには、昨シーズンのメンバーが10人残っている。だが、このオフのカワイ・レナード(トロント・ラプターズ)のトレードにより、レナード、ポール・ジョージ(ボストン・セルティックス)、ジェームズ・ハーデン(クリーブランド・キャバリアーズ)という地元のスターたちとともに高みを目指していたこれまでのチームに別れを告げ、新たな時代のスタート地点に立っている。
◆■「塁は僕にとってはオールスター」…頼れる先輩ビールが絶賛する才能と成長
その始まりは、レナードの契約が絡んだサラリーキャップ規定違反に対する重い処分の発表で、いきなりつまずいてしまった。だが、クリッパーズのティロン・ルーヘッドコーチ(HC)が「タフな状況のなか、(9月4日の)レイバー・デー(労働者の日、祝日)の翌日には全員が戻るよう伝えたところ、ベテラン選手を含め全メンバーがそろった。誰もが連日練習に参加し、見事なリーダーシップと非常に高い意欲を示してくれた。選手たちを誇りに思う」と話すなど、選手たちは前だけを見ている。
トレーニングキャンプロスター21人のうち、11人は経験が3シーズン以下の若手。今シーズンが15年目のブラッドリー・ビールは、「自分はまだまだできると思っているけれど、知識を分け与えることもゲームの本質」と語り、自らの経験をチームに生かしていくつもりだ。
ビールがこれまでのキャリアで最も輝いたワシントン・ウィザーズ時代は、NBA入りしたばかりの八村にとっても頼れる先輩であり、八村も「また彼と一緒にプレーできるなんて最高。楽しみ」と語る。そして、ビールのほうは、「塁は、僕にとってはオールスターだ。あの体格、精神的な成熟度、そして3つのレベル(ゴール下、ミドル、アウトサイド)すべてから得点できる。それは彼がまだ“ミドルレンジのアサシン(中距離から確実に仕留める選手)”だった若手の時に僕がいつも伝えていたことだ。彼がドラフトされたばかりで、“リトルベイビー”とか“ベイビー・カワイ”と呼ばれていたころの話だ。だからこそ、彼がそうした枠を超えてプレーの幅を広げ、成長していく姿を見られるのは本当に特別なこと。それに、彼は今やリーグ屈指の3ポイントシューターでもある。その実力は言うまでもない。彼の成長や試合へのひたむきな姿勢には感心させられる」と、とうとうとうとうと語った。
ルーキー時代を知るビール(右)は八村の成長に称賛の声を惜しまなかった [写真]=Getty Images
ビールが評したとおり、これまでの7年間のキャリアで着実にステップアップしてきた八村は、新チームでどういったことを目指していくのだろうか?
「フィジカルは重要な鍵になると思うし、オフェンス、ディフェンス、リバウンドなどはリーグに入ってから僕が大きく成長できた部分で、今シーズンはそれを証明したい。大きく向上したシュート力はもちろん、それらはチームが勝つために僕に求められていること。タイ・ルー(ルーHC)やコーチ陣とも、彼らが何を重視し、僕にどんな役割を期待しているのかについて話した。自分の役割を担うことを楽しみにしているし、自分らしいプレーをして、そこからどうなるか見ていきたい」と目を輝かせ、「自分もベテランの域に入っている。チームが若いなかで、コミュニケーションを取り、声もかけながら、どんどんチームを引っ張っていかないと」と、これまで自身にはなかったリーダーシップを意識していることも口にした。
◆■ リーダーシップへの意識とルーHCの構想「様々なポジションや役割で起用できる」
そしてルーHCは、八村の役割について自らが描く構想を次のように語った。
「彼はプレーオフ史上最高の3ポイントシューターだし、昨シーズンは3ポイント成功率43パーセント(実際には44.3パーセント)を記録した。だが、彼のプレーの幅をもう少し広げる必要がある。ポストプレーを増やしたり、ミスマッチを突いたり、あるいはミドルレンジからのプルアップ・シュートをもっと積極的に打ったりすることだ。単なるスポットアップ・シューターにとどまらず、これまでとは違う形で得点を重ねることを彼に求めていく。その点にはとても期待している。
また、優れたリバウンダーとしての姿を取り戻すことも大事だ。(リバウンドに関しては)リーグに入りたてのころのほうが良かったからね。でも、それは我々にとって、大きく期待できるサインだと思う。彼のサイズ、ディフェンスでのスイッチ対応能力、そしてオフェンスで複数のポジションをこなせる能力……。また、みんなも覚えているように、(2023年西カンファレンス決勝、ロサンゼルス・レイカーズ所属時の)デンバー(ナゲッツ)とのシリーズの大半で、彼はジョーカー(ニコラ・ヨキッチ)をマークしていた。彼をさまざまなポジションや役割で起用できることにとてもワクワクしている」
攻防両面において, 八村の才能を存分に生かすつもりだ。
記者会見に臨んだ八村 [写真]=山脇明子
「レイカーズでの4シーズン弱は、すばらしい時間だった。チームは本当に僕をサポートしてくれて、すべての人に感謝している」。八村は続けた。「ただ、次へ進むべき時が来た。今はここ、クリッパーズにいられて幸せです」。
「すごくかっこいい」ユニフォームで、クリッパーズの新時代を築く。八村のこれからが見逃せない。
文=山脇明子