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2026年11月07日(土)05:05

◆■ゲームの進化が及ぼす体への負担
ティンバーウルブズのアンソニー・エドワーズは右ヒザの手術で年末まで欠場の予定 [写真]=Getty Images
NBAの2026-27シーズンが開幕してまだ1カ月も経過していない。それにもかかわらず、リーグではスター選手を含む負傷者が後を絶たない。
一例として、オクラホマシティ・サンダーはロスターに甚大な被害が及んでいる。ジェイレン・ウィリアムズが左腓骨骨折と足首脱臼、ケイソン・ウォレスも左肩関節唇の手術を受け、長期離脱が確定。チェット・ホルムグレンは右ヒザの膝蓋腱損傷で10週間の離脱が見込まれている。他球団でもアンソニー・エドワーズが右ヒザの手術で年末まで、大ケガから復帰したタイリース・ハリバートンも左ハムストリングを痛めている。
『The Athletic』によれば、10月1日以降だけで約60人が「欠場」としてリストアップされたと言う。
ただ、一概にケガが増えたとは言えない。リーグのスポーツ医学部門ディレクターを担当するジョン・ディフィオリ医師は、今シーズンのこれまでのケガの件数と重症度は、近年のシーズンとほぼ同程度だとしている。
一方で、現在のバスケットボールが与える選手への負荷は確実に変化している。開幕から1週間の段階において、NBAは選手トラッキング導入以降で1試合平均ポゼッション数が最多、1ポゼッションの平均時間が最短に。守備では以前より高い位置からボールマンを捕まえ、攻撃では3人以上がオフェンスリバウンドへ飛び込む回数も過去最多となった。
また、3ポイントシュートの増加によってコートは広がり、選手は長い距離を守らなければならない。空いたレーンへは、より速く、より爆発的なドライブやカッティングが飛び込んでくるようになり、接触もハードなものとなった。2018-19シーズンにはオフェンスリバウンド後のショットクロックも24秒から14秒へ変更され、プレースピードも格段に加速している。
現在のNBAはプレーの効率化や戦術の成熟によって、単純な出場時間だけでは選手の負担を測れなくなってきているのだ。これらの問題を指摘する元デトロイト・ピストンズの医療・パフォーマンス部門シニアディレクターで、現在スポーツ理学療法士として活動するバーナード・コンデヴォーは「プレースタイルが変化してきたことは間違いない」と語り、昔よりプレー時間が短くても、1つのプレーで要求される加速、減速、方向転換の強度が高まっている点に言及。整形外科医のニラヴ・パンディアも「より大きな選手がより速く、爆発的な動きを繰り返すことで、ストレスが増えている」とコメントしている。
それに加えて、NBA選手の休暇はあってないようなものに等しい。オフシーズンもスキルトレーニング、ピックアップゲーム、ウエイトトレーニングなど、技術向上と筋力維持を継続。特にスキルワークでは同じ動きを何度も繰り返すことから、体に局地的な負荷が継続的にかかる。
◆■ケガのリスクは“NBA入り前”から蓄積か
大ケガから復帰したペイサーズのタイリース・ハリバートンも左ハムストリングを痛めている [写真]=Getty Images
もう1つ見逃せないのが、NBA入りする前から蓄積されているダメージだ。
現在のトップ選手は、幼少期からAAU(全米アマチュア体育連合)に登録するクラブチームなどに所属し、各種エリート大会を年間を通じて転戦する。オフシーズンに入っても休養期間は短く、シュートやドリブルなど同じ動きを何百、何千回と反復するスキルトレーニングへ戻る。
コンデヴォーはNBAコンバイン時代の経験について、衝撃的な証言をしている。
「19歳の選手たちがやってきて、彼らの医療記録を見る機会がありました。そうすると、その子たちのアキレス腱やヒザが、NBAで10年間プレーしてきた選手に見られるような状態になっていることがあったのです。つまり、今の選手たちがこなしているプレー量は、間違いなく要因の1つと言えます。単純に、以前よりはるかに多くプレーをしていますから」
NBAとUSA Basketballが作成したユース向けガイドラインでも、14歳以前の単一競技への専門化を避け、幼少期には複数競技へ取り組むことを推奨している。バスケットボールだけを幼いころから繰り返すことで、特定の腱や関節に同じ負荷が蓄積。その状態でNBAに入り、世界最高レベルのスピードとパワーにさらされることになれば、ケガにつながるリスクは容易に想像がつく。
さらに厄介なのが再発である。リハビリテストをクリアして試合へ戻れたとしても、その組織が負傷前と完全に同じ状態へ戻ったことを意味するわけではない。特にハムストリングやふくらはぎなどの筋損傷は、再発リスクを抱え続ける。
NBAのケガ問題には1つの犯人がいるわけではない。82試合という長いシーズン、年々高速化するプレースタイル、年間を通じた反復トレーニング、幼少期から積み重なる競技量、そして過去のケガ。そのすべてが複雑に重なり合っている可能性がある。
選手は以前より速く、強く、技術的になり、ゲームはエキサイティングになった。しかし人間の腱や筋肉まで、同じ速度で進化したわけではない。NBAが直面しているのは、現代バスケットボールの進化そのものに、人体がどこまで耐えられるのかという問題なのかもしれない。
文=Meiji